■ものづくりは、たった1枚の「製品企画書」から始まります
設計開発の出発点は、商品企画部門から出される「製品企画書」です。
たったA4サイズ1枚のペーパーから、さまざまな分野の技術者が詳細設計を行い、具体化していきます。
そうして、1枚の企画書は、何百枚ものペーパー(詳細設計書)に成長していきます。
このような設計開発のプロセスを"機構設計に携わる技術者"の立場で見ていきましょう。
面白い仕事ですよ!
■機構設計とは、製品全体をトータルに構想する仕事です
(1)どんな形状が好まれのか?
(2)どのくらいの大きさが望ましいか?
(3)どのように工夫すれば、お客さんは使いやすいか?
(4)どのような特長(フィーチャー)を盛り込むべきか?
(5)どのような機構/動き方が好まれるか?
(6)どのような安全規格や品質規格をクリアーしなければならないか?
(7)どのような部材供給を確保する必要があるのか?
少しあげるだけでも、最低限これらを考慮しなければなりません。
たった1枚の「製品企画書」を元に、プランしていくのです。
本当にいろんなことに目配りする必要があります。
技術開発の、「総合格闘技」と言ってもいいでしょう。
まさに"全体を構想する"仕事なんです。
■答えは決して1つじゃありません
これまでの学校の勉強とは異なり、決まった正解などありません。
1人ひとりが自分の頭で考えて、アプローチしていくのです。
わたしたち技術者の頭には、常に、
・売りやすいか
・品質は大丈夫か
・合理的なコストか
・組み立てやすいか
という視点が染み付いています。これらにこだわって、
技術者はいろんな知恵を絞っていくのです。
正解なき正解を求めていくのです。
■例えば、「環境問題にどう取り組むのか」を具体的に考えてみます
(1)環境規制物質/材料を排除する
カドミウム、鉛、水銀、六価クロム、臭素化合物、塩素化合物等々、
今迄あたりまえに使っていたものが急速に規制されています。
当然ながら、性能を維持、向上させつつ、代替物質に置き換えていかねばなりません。
物質/材料に関する技術、知識がこれまで以上に重要になっています。
(2)減量化に取り組む
使用する材料を極力少なくし、減量化を図っています。
本来の性能が維持できる限界を探りながら材料の選定、加工を行います。
その為には、あらゆる金属材料及びプラスチック材料の知識を習得し、
構造設計を理解しておく必要があります。
例えば、温度の影響を受ける材料は、本当に扱い難いものです。
もちろん、だからこそ、技術者にとっては、腕の見せ所なんですね。
(3)分離・分解処理の容易化に取り組む
「3R(リユース、リジュース、リサイクル)」という言葉を聞いたことがありますか?
分離・分解を容易にすることは、裏を返せば「作りやすい」ということになり、
企業ではコストダウンに繋がる重要な要素です。
これらは、構造設計、筐体設計で活きてきます。
"環境にやさしい"という視点は、いまや技術者にとって必須科目なんです。
(4)ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment:LCA)
製品の一生における環境負荷を評価する手法です。
製造、輸送、販売、使用、廃棄、再利用まで、すべての段階での環境負荷を総合的に評価します。
製品に使う材料、部品1点1点について、「ゆりかごから墓場まで」全体を見ていく必要があるのです。
環境に配慮したものづくりを進めるには、機械工学の知識を総動員した設計開発が求めれます。
環境との関係から機構技術者の仕事を見てきました。
「ものつくり」の一端を感じてもらえるとうれしいです。